2024アメリカ大統領選挙の論点をおさらい

世界経済・マネー・社会課題

2024年11月に投開票を控えたアメリカ大統領選挙が迫る中、ドナルド・トランプ氏とカマラ・ハリス氏の熾烈な選挙戦が日本でも大きく報道されている。保守派の代表とされるトランプ氏と、リベラルな立場を持つハリス氏というイメージが強いが、具体的にアメリカ国内では両候補に対してどのような期待が寄せられているのだろうか。

同国シンクタンク・ピュー研究所(PewResearchCenter)の最新の調査結果をもとに、アメリカ有権者の視点から論点を探っていく。選挙戦の行方を占う重要な要素として、各候補者に対する期待や関心が浮かび上がってきている。

トランプ支持層は経済重視、ハリス派の関心は人権問題?

同調査によると、共和党トランプ氏と民主党ハリス氏のそれぞれ支持層の間には顕著な関心の違いが浮き彫りになっている。
参考:https://www.pewresearch.org/politics/2024/09/09/issues-and-the-2024-election/

トランプ氏を支持する有権者は、経済(93%)、移民(82%)、暴力犯罪(76%)を主要な問題として挙げている。全体として、経済、移民、外交政策に関して、トランプ氏に対する信頼が高い傾向にある。
一方で、中絶政策や人種問題に関するトランプ氏への信頼は44%に過ぎない。人種や民族の不平等を「非常に重要」とするトランプ支持者はわずか18%にとどまり、気候変動に関しては11%とさらに低い数値を示した。
トランプ氏のより過激な主張としては、連邦準備制度の独立性(中央銀行の独立性)に疑問を呈したり、大幅な関税や減税、移民に対する厳しい取り締まりなどが提案されており、日本においても度々報道されてきた。

対照的に、ハリス氏を支持する有権者は、医療(76%)、最高裁判事の任命(73%)といった問題を最も重視している。さらに、多くのハリス支持者が経済(68%)中絶(67%)も選挙での投票において非常に重要であると回答している。中絶政策や人種問題に関しても、ハリス氏への信頼が優勢であることがわかった。
日本であまり馴染みがないが、人工中絶問題(2022年に最高裁が判決を覆し、各州に中絶に関する独自の法律を制定する権限を与えたこと)について現在アメリカで議論が激化しており、この問題で、法律家出身で元司法長官のハリス氏のリーダーシップに対する期待が高まっていることが伺える。
一方で、外交分野でハリス氏を評価する有権者はわずか45%にとどまっている。

日本への影響は?アメリカのインフレと円安ドル高

トランプ氏が再選した場合、金融市場への影響が注目される。とくに日本の読者にとって気になるのが「円安ドル高」の行方ではないか。
中でも注目されるのが「米ドルが過大評価されている」とトランプ氏が主張している点。これはIMF(国際通貨基金)の分析とも矛盾していない。
トランプ氏に近い、前通商代表部長官のロバート・ライトハイザー氏は「ドルを他の通貨に対して下落させる政策を検討」し、意図的な通貨切り下げに言及しているとの報道もある(参考:POLITICO)。ただこれについては、逆にインフレ率を加速するとの見方もある。

一方のハリス氏も選挙公約において、中間所得層の復活や、医療、住宅、食料品などの日常的な必需品のコストを削減するために戦うと宣言しており、高いインフレが続くアメリカ経済の現状については何らか手を打つことが考えられる。

いずれの候補者が当選しても金融市場への影響が必至。トランプ氏の通貨政策と介入への主張はより具体的かつ直接的であるため、主に共和党支持層からの信頼が厚い。基軸通貨ドルの国際的な通貨動向が、日本の金融市場や経済にどのような影響を与えるのか今後の展開に注目が集まる。