音楽流行|2024冬のイギリス最新ヒット曲を整理した

文化・芸能

ストリーミングサービスの進化によって音楽がより身近になり、日本に居ながら世界のヒットチャートにアクセスし易くなった。

各国のリスナーが実際に熱狂している曲は実にさまざま。
世界の文化、経済のホットな話題を調査するトレカイ編集部では、今回、UK(イギリス)音楽市場に注目した。ビートルズを生んだロック本場の地で今なにがリアルに好まれているのか。
ダウンロード、CD売上、ストリーミング再生を集計した現地の「オフィシャルUKチャート」のヒットチャートを元に、2024年冬の人気楽曲を紹介する。本稿では主に、2024年11月25日 – 2024年12月1日期を参照しトレンドを整理する。(参考:オフィシャルチャート)。

グレイシー・エイブラムス「THAT’S SO TRUE」

アメリカのシンガーソングライター、グレイシー・エイブラムスによる初の全英1位シングル。ビルボードで1位を獲得したグレイシーのフルアルバム『The Secret Of Us』からシングルカットしてリリースされた一枚。

ジジ・ペレス「Sailor Song」

アメリカのシンガーソングライター、ジジ・ペレスによる楽曲。2024年4月にTikTokでティーザーを公開し、7月26日に正式リリースされると、UKチャートにおいても徐々にランクを上げ11月1日にはジジ初の全英1位を獲得した。同性愛と憧れを表現したオルタナティブ・フォークの楽曲。

ローズ&ブルーノマーズ「APT」


BLACKPINKのローズとブルーノ・マーズによる楽曲。ローズのデビューソロアルバム「rosie」からシングルカットされた。
タイトルの「APT」は、韓国の飲酒文化「アパートゲーム」として知られる人気のお酒を飲みながらするゲームからインスピレーションを得ている。アプ・ア・テウ(아파트)という掛け声は「アパート」の韓国語の発音。

用語解説:アパートゲーム
「アパートゲーム」は、重ねた手を下から抜いていき、指定された数字のターンに当たってしまった人が負け、というゲーム。アパートの階数に見立てて手を重ねていくのでこの名前がついた。韓国では友達同士の飲み会や、仲間と盛り上がりたいときによく行われる定番のゲーム。

サムフェンダー「People Watching」

サムフェンダーはイギリス・ノースシールズ生まれの俳優、兼シンガーソングライター。2024年11月15日にリリースされたこの楽曲が全英4位にランクインし、自身にとって最高のチャートデビューとなった。米国ビルボードではランク外。
歌詞は、イギリスの青春ドラマ『バイカー・グローブ』に17年間出演し、サムフェンダーにとって”性別を超えたソウルメイト“だというアニー・オーウィンとの関係が綴られたもの。

サムフェンダーと兄―オーウェン

サムフェンダーとアニ―オーウェン(画像引用:youtube.com)

テディ・スイムズ「THE DOOR」

テディ・スイムズはアメリカのシンガーソングライター、兼ユーチューバー。カバー曲で注目を集めたのを皮切りに、現在はレーベルと契約し、R&Bとカントリーを融合させた楽曲をリリースしている。

サブリナ・カーペンター「BED CHEM」

サブリナ・カーペンターは、アメリカの女優、兼ポップシンガー。もともとディズニーの子役スターだったサブリナは、3枚目のアルバム「Singular」のリリースで本格的にポップシンガーに転向。「Almost Love」と「Paris」は彼女を注目のアーティストとして全英に知らしめた。

ビリー・アイリッシュ「WILD FLOWER」

ビリーアイリッシュはイギリスでも人気が高く、WILD Flowerは2024年5月に全英1位を獲得した3rdアルバム「Hit Me Hard And Soft」からシングルカットされた楽曲。

リンキンパーク「THE EMPTINESS MACHINE」

2017年にメインボーカルのチェスター・ベニントンが逝去して以来、リンキン・パークがリリースした最初のシングル。エミリー・アームストロングをグループの新ボーカルとして迎え初のリリースとなった。
ベニントンの死後、新生リンキンパークのオリジナル曲のみで構成されたアルバム『From Zero』は全英オフィシャルアルバムチャートで1位にランクインした。リード・シングル「The Emptiness Machine」は、その2ヶ月前に4位に初登場し、全英シングルチャートで過去最高のヒットとなっている。

ノア・カーハン「Stick Season」

2024年にイギリスで最も売れたこの楽曲は、今年最長の連続首位記録(7週)を保持する。2024年に入ってからこれまでに172万チャートユニットを売り上げており、オーディオとビデオを合わせたストリーム数は2億100万回に達している。

 

補足解説:オフィシャル・チャート・カンパニー(Official Charts Company:OCC)
このランキング会社の歴史は、1952年11月にイギリス初のシングル・チャートが作られたことから始まる。当時のニュー・ミュージック・エクスプレスの広告マネージャー、パーシー・ディキンズが、広告主に彼の新しい音楽紙を売り込む何らかの方法が必要だと考えたことにさかのぼる。
ディキンズは、小売業者の友人数人に電話をかけ、彼らの最も売れた製品の販売数を集計して表を作成することで、最初のチャートを作り上げた。こうして、初の全英シングルチャートが誕生した。

以上、イギリスのヒットチャートから選んだ9曲を紹介した。注目すべきは、イギリスと言語を共有するアメリカやカナダといった英語圏のアーティストが上位を占めている点だ。ユーチューバーや俳優たちのランクインもグローバルな潮流と言える。UKロックの存在感が薄い点についてはやや物足りなくも感じた。

世界の音楽シリーズ、次回はインドのヒットチャートを深堀する。