暮らしが変わる食洗器、世界のトレンドを調査

流通|海外のトレンド商品リサーチ

女性の社会進出や働き方改革などの社会変化を反映し、共働き世帯が年々増加している。厚生労働省の統計によると、日本の64歳以下の共働き世帯数は2022年に1,260万世帯を超え、専業主婦世帯の約2.5倍に達したという。

令和の働く世代にとって家事分担は大きな課題で、快適なくらしのためにもなるべく負担を減らしたいもの。くらしのヒントになる「海外のトレンド商品」を調査するこのコーナーでは、今回は流通業界24年の記者がさまざまな世界の食洗器をお届けする。

世界は「洗浄性能」と「大量収納」を重視

食洗器の普及率が70%を超えるアメリカの評価から見ていこう。
次に紹介するのは、大手ガジェット・生活品レビューメディアの「ザ・ワイヤーカッター」が、「洗浄力に優れ、食器の積み込みが簡単で、静かで信頼性が高い優れた食洗器」として最高評価(The BEST)を与えた3製品。
参考:Wtrecutter

Bosch 300 Series SHE53C85N(ドイツ)

ボッシュ330シリーズのSHE53C85N、参考価格は894ドル(134,000円)。

主要な小売店で高評価を得ているこの製品は、高い洗浄性と、44デシベルの静穏設計、サイズ調整可能な中央ラックが最大のポイントで、様々な形状の食器に合わせて、柔軟かつ効率的に食器を収納することができる。センサーが清掃時間をリアルタイムで調整し、90分以内に掃除を完了する便利機能も高評価。プラスチック製品の乾燥にはやや難ありとの評価も。

Maytag MDB8959SKZ(アメリカ)

メイタグのMDB8959SKZ、参考価格は768ドル(115,000円)。

堅実で強力なクリーニング性能はSHE53C85Nと同等で、加熱乾燥サイクルにより、プラスチック製品を他のモデルよりも優れた乾燥性能で仕上げる点が特徴的。ラックのサイズは変えられないが、海外サイズの大きなフライパンも収納することができる。同スペックの競合製品と比較しリーズナブルな点も特徴的。

Miele G7106(ドイツ)

ミーレのG7106、参考価格は1,749ドル(262,000円)。

前述Wirecutterのほか、Good Housekeeping(米国で140年続くライフスタイル誌)でも高く評価されている食洗器のハイエンドライン。他製品のおよそ2倍の価格ながら、短時間で”非常にきれい“に洗浄、頑丈で広々としたラック、43デシベルの静音、サイクル終了時にドアが自動的に開き乾燥を促進する機能において最高評価を得ている。

次世代の食洗器?クラファンで誕生した革新

次に、クラウドファンディングサイト・Kickstarter(キックスターター、ニューヨーク)とINDIEGOGO(インディーゴーゴー、サンフランシスコ)で、合わせて2億4,000万円超の調達をし話題となった食洗器「Capsuke Persobai Dishwasher 2.0」を見てみよう。

スコットランドのスタートアップ企業、Loch Electronics社が手掛けるこの製品は、何よりスタイリッシュな見た目が特徴的。縦横46.5×26.2㎝という”世界最小”のポータブル食洗器は、動画で分かるようにキャンプに持ち運ぶことが出来、配管工事の必要がない。15分の高速洗浄サイクルで大型の台所用品にも対応。競合製品と比較し、少ない水とエネルギーで効率的に洗浄する。

前述のインディーゴーゴーで”世界中に発送”しているため、日本でも入手可能だ(2024年11月時点、45,450円~購入可能)。
https://www.indiegogo.com/projects/capsule-personal-dishwasher-2-0–2#/

日本の国内事情と気になる今後

日本の食器洗い機の普及については、興味深いデータがある。
内閣府の調査によると、2021年3月末時点で日本の食洗機普及率は34.4%にとどまっているという(2人以上の世帯が対象)。欧米の同率が70%に達してることと比較し、未だ日本で普及しているとはいえない状況だ。主な要因として、日本の住宅事情により、キッチンに据え置き型の食洗器を置くスペースが無いことが挙げられる。

一方で、「1度食洗器を購入した世帯はその後も使用を止めない」という興味深いデータもある。冷蔵庫や洗濯機のように、家庭によっては既に生活に欠かせない必需品として存在感が増していることが伺える。

近年、パナソニックやアイリスオーヤマは「ひとり暮らし用(1~3人用)食洗器」を続々と発売している。小型かつ、工事不要なタンク式が主流で、婚姻前の若年層に普及することで市場に広く浸透させていく狙いだと考えられる。

パナソニックNP-TML1-W
パナソニックNP-TML1-W

アイリスオーヤマPZSH-5T-W
アイリスオーヤマPZSH-5T-W

家事負担の軽減だけでなく、水道水の節約によりSDGs(持続可能な開発目標)の観点からも注目が集まる食洗器。技術革新が進むことでますます普及し、10数年後には日本人のライフスタイルが大きく変貌しているかもしれない。注目の業界である。