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今回は2024年9、10月期にニューヨーク証券取引所アメリカン(NYSE American )にて新規上場を果たした企業10社を紹介し、最新ビジネスの潮流を探る。
NYSEにおける新規上場10社
キンダーケア・ラーニング(KinderCare Learning Companies, Inc.)教育業界
https://www.kc-learning.com/
1969年設立のキンダーケア・ラーニングは、米国における営利目的の保育および幼児教育施設を運営する企業。生後6週間から12歳までの子ども向けに教育プログラムを提供しており、特に就学前教育の需要の高まりに応える形で成長を遂げてきた。
創業者ペリー・メンデル氏は、女性の労働力参加拡大を背景に、保育のニーズ増加を予見し、事業を立ち上げた。成長を続けている同社は、近年アメリカにおいて「社会のマクドナルド化」を懸念する声が上がるほどの影響力保持している。
イングラムマイクロ(Ingram Micro Holding Corporation)情報技術業界
https://www.ingrammicro.com/
1979年に設立されたイングラムマイクロは、情報技術製品およびサービスの大手販売代理店。IT業界の流通で確固たる地位を築く同社の上場は、テクノロジー分野での影響力を一層強化するものと見られている。
アップストリームバイオ(Upstream Bio)製薬業界
https://upstreambio.com/
アップストリームバイオは、バイオエンジニアリング(生物工学)の技術を活用して、炎症反応の上流因子を標的にしたモノクローナル抗体の開発に取り組む企業。特に「verekitug」という治療薬を重度の炎症性疾患患者の新たな治療選択肢として位置づけている。
現在、喘息や慢性副鼻腔炎(CRSwNP)の治療に向けた第2相試験を進行中で、今後の臨床データが注目される。
セプテルナ(Septerna, Inc.)製薬業界
https://www.septerna.com/
セプテルナは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)をターゲットにした新薬の開発を行っているバイオテクノロジー企業。独自の技術プラットフォームを基に、複数の治療領域における新薬を迅速に開発し、患者に新たな治療法を提供することを目指している。
セリベル(Ceribell, Inc.)医療システム
https://ceribell.com/
AI搭載のポイントオブケアEEG診断システムを開発するセリベルは、急性期医療におけるてんかん重積状態の管理に革命をもたらすことを目指している。最先端のAI技術を用いたシステムは、既に510(k)承認を取得しており、臨床現場での実用化に向けたステップを踏み出している。
ウィーライド(WeRide Inc.)自動運転技術
https://www.weride.ai/
中国発の自動運転企業ウィーライドは、国際的にレベル4の自動運転技術を展開しており、現在、複数の国で無人運転許可を取得している。シリコンバレーに本社を構え、世界各地に研究開発およびオペレーションセンターを設立しているウィーライドは、今年8月にはナスダックにも上場。資金調達を強化しており、今後の自動運転市場でのリーダーシップを狙う。
キャンプ4(CAMP4 Therapeutics Corporation)製薬業界
https://www.camp4tx.com/
CAMP4は、遺伝子の発現を高め、健康なタンパク質レベルを回復させる新しいアプローチを採用したASO治療薬の開発に取り組んでいる企業。特に、1,000を超える疾患に対応可能な新薬の開発が期待されており、その成長可能性は非常に高い。
スタンダードエアロ(StandardAero, Inc.)航空宇宙業界
https://standardaero.com/
1911年に設立されたスタンダードエアロは、航空機のエンジン修理やメンテナンスサービスを提供する企業で、特に商業航空や防衛分野での実績が豊富。近年はビジネス航空やヘリコプター分野にも進出しており、業務の多様化を進めている。
ビカラセラピューティクス(Bicara Therapeutics, Inc.)製薬業界
https://www.bicara.com/
ビカラセラピューティクスは、バイオエンジニアリング技術を活用した、がん治療における新たなアプローチを提案する企業。がんの腫瘍微小環境を調節するターゲット療法の開発を進めており、患者のQOL向上を目指している。
フロントビューREIT(FrontView REIT, Inc.)不動産開発
https://www.frontviewreit.com/
フロントビューREITは、米国31州の96の市場にわたる商業用不動産を所有・運営する不動産投資信託(REIT)企業。差別化された戦略として、アクセスの良い交通量の多い場所に立地するテナント向けの物件を多く取り扱っており、安定した収益を上げている。
記者の目
医療分野での上場が目立つ。日本ほどではないが、アメリカにおいても少子高齢化が深刻な問題と捉えられており(2022年に出生率1.66、日本は1.26)、需要の高まりから今後も医療分野への投資が盛んに集まる見通し。
歴史が古い企業の新規上場も目立った。スタンダードエアロにおいては企業の統廃合や部分的な事業売却を経て今回の上場にこぎつけた。ファミリー企業が活躍した時代は今や昔、株式投資先進国ならではのビジネスの捉え方と見るべきか。

